甘さがいっぱい
ぶどう
山形県のぶどう栽培の中心は小粒種の「デラウェア」です。ぶどうの生産に適した排水の良い土壌と気象条件から、甘さたっぷりに育ちます。
「デラウェア」は、甘味、酸味のバランスに優れ、消費者からは根強い人気があり、生産量は山形県が日本一を誇っています。他にも「巨峰」「ピオーネ」などの大粒種や、皮ごと食べられる「シャインマスカット」など、多くの品種が栽培されています。また、県内には多くのワイナリーもあり、ワイン専用の品種も栽培されています。
山形県のぶどう栽培は、そのほとんどが「棚」栽培です。
おいしいぶどうを実らせるために、大枝を間引く「整枝」と小枝を間引く「剪定」を行い、
枝の重なりを少なくして日当たりを良くします。
雪の多い山形県では、棚を積雪から守るために、葉が黄色く色づく11月から、根雪前の12月の間に行います。
収穫時期を早めたり、葉や果実を雨から守るために、雪の心配がなくなる2月下旬頃から雨除けハウスの被覆が始まります。ぶどうは霜などの低温に弱いので、遅霜の危険がなくなる5月上旬までは、暖房して温度を調整し、寒さから守ります。
ぶどうの棚は、その多くが排水の良い傾斜地(けいしゃち)にあるので、ハウス被覆は大変な作業になります。
春になると、前の年に伸びた枝の芽から新しい枝「新梢」(しんしょう)が伸びてきます。この新梢には、2つから4つの「花穂」
(かすい)と呼ばれる小さな花の集まりが付いていて、5月下旬頃にはこれら小さな花の開花が始まります。
この時期は、良い実をならせるための大切な作業が続きます。新梢を間引く「芽かき」や、房を適度な大きさにする「花穂整形」、種なしにするための「ジベレリン処理」、大きくおいしくするために房を間引く「摘房」と粒を間引く「摘粒」などを行います。
実が品種特有の色や味になったら収穫の始まりです。糖度は18度以上、酸味が薄らいだことを確認してから収穫します。
収穫したぶどうは、房の大きさや形状、糖度や色づきなどを厳しくチェックされてから、初めて出荷されます。
生産量日本一を誇る「デラウェア」の収穫が始まるのは6月下旬から。
「デラウェア」は種なしで食べやすく、県内でも長く親しまれている品種です。大粒種「ピオーネ」や「高尾」「巨峰」などは、8月下旬になってから続々と出荷されます。「シャインマスカット」は9月中旬頃から収穫・出荷が始まりますが、一部は冷蔵庫で保管して、12月のクリスマスシーズンにも出荷されます。
南陽市鳥上坂のぶどうの碑には以下のように記されています。
「ここは江戸時代初期にぶどう栽培が始まった、山形県ぶどう発祥の地。
地区内の大洞鉱山が隆盛していた頃、甲州(現、山梨県)の鉱夫が甲州ぶどうを持ち込んだ説、また出羽三山に通じるこの街道を通って、修験者がぶどうを持ち込んだ説の二つが伝えられている」。
どちらの説にしても、甲州と現在の南陽市周辺の地帯には共通する風土があると見出されていたようです。
その結果、江戸の後期には、南陽市一帯で甲州ぶどうが作られるようになったとされており、明治には、欧州種や米国種の「デラウェア」などが入り、さらに産地として本格的に栽培されるようになりました。